入れ歯を作った後、誰を頼ればいいの?

入れ歯を作った後、日々のお手入れの方法に疑問があった時、入れ歯が合わなくなった時、誰に相談すればいいんでしょうか?
先生は忙しそうだし、気が引けます。

田川さんがインタビューで話してくれているように、入れ歯のクリーニングはメンテナンスのご予約で対応できるのですが、入れ歯が痛い、当たるなどの「入れ歯の調整」は歯科医師が対応します。
メンテナンスは歯科衛生士、入れ歯の調整は「治療」なので歯科医師が担当します。

え?「調整=治療」なんですね!?
調整は先生の仕事なのですね?

はい。
ちょっとでも気になることがあったら、何回でも遠慮せずに「調整してほしい」とお伝えください。
「調整」と「メンテナンス」の違いについて、衛生士のインタビューで触れてますので、そちらもぜひ読んでください。
調整は、入れ歯自体を削ったりバネの調整をすること。
メンテナンスは、入れ歯自体や残っている歯の汚れを取ったりすること。
なので、担当が違うんですよ。
また、日々のお手入れに関してもこちらのページで詳しくご説明しています。

(読む)なるほど・・・。医院では細かいところまで入れ歯の洗浄をしてくれるんですね。

はい。
調整は、削るだけじゃなくて「盛る」=「リベース」も出来るんです。
なかなか知られていないことなので、以下ぜひご一読ください。

入れ歯調整「リベース」現場レポート

「リベース」とは何なのでしょうか?
リハビリ入れ歯ありの「超精密入れ歯」を作った方のリベースの現場レポートをします!

1. 「超精密入れ歯」の型取り時にやったのと同じ「イーウー」をもう1回やります

超精密入れ歯を入れたことで、さらに変化した口の形を取るため、柔らかい印象材(いんしょうざい:型を取る時に使う粘土のようなもの)を盛って「イーウー」と患者さんにやってもらいます。
イーウーとやることで、ほっぺと歯ぐきの間の深いところまで印象材が入り込んで、正確なお口の形が取れます。
印象を取った後、人工歯の部分にかぶったシリコンをキレイに落としていきます。

【社長】
これがリベース(今ある入れ歯に盛るために、現在の入れ歯に印象材を再度盛って付け足す)というやり方です。
この方は、超精密入れ歯で、リハビリ入れ歯ありの患者さんです。
リハビリはしたけど、更に口の中が変化しているため、入れ歯が転覆していました。
口の中はどんどん変化するので、調整時OKだったとしてもそのあとNGになることがあります。
なので、遠慮なさらずに先生に変化して起きている状況を伝えてくださいね。

2. 印象材に刺さるカッターの深さによって、口腔内の筋肉がどれだけ締まってきたかが分かります!

一番の主訴は、入れ歯が転覆するということです。
その主訴を治すための、リベースです。

3. (余計な部分を取って)再度患者さんのところへ

今から僕が検査しますけど、今すごく両側とも奥の方の「筋」がすごく出ているんです。
以前は、これが出ていなかったんです、この筋が出るということはいいことです。
これをキレイに再現した型が取れました。
これをお預かりして、超精密にピッタリ合わせれば数年は大丈夫かなと思います。
口腔内の筋肉の変化が大きい小さいは、その方の生活環境によります。
また合わなくなったら、こういう風な調整(リベース)が出来ます。
今回また「イーウー」やってもらったので、しっかり膨らんだ筋肉が出るんですよ。
それをしっかり取りました。

(「咬合調整:こうごうちょうせい」を「咬合紙:こうごうし」でしています)はい、カチカチカチ、ギリギリギリ。
空気が抜けるの、わかります?
姿勢が変わるのと同時に、アゴの位置がずれてきていますので噛み合わせ調整します。
(調整して、もう一回)
ギリギリギリ、前後にもお願いします。

4. 再度調整

(再度)ギリギリギリ、カチカチカチ・・・スムースに動くようになりました。
その動きを、紙(咬合紙)を入れた状態で横に、今度は前と後ろにやってください。
(咬合紙を見て)この紙がグサグサになっているのがいいんです、噛めているということです。
噛めない=穴が開かない、ということです。(なるほど)

5. 再々度、削って調整

相手(対合歯)はクラウン(かぶせ物)なので、摩耗のスピードが速い。
調整もそこを考えてします。
ちょっと食べ物を食べてみて、違いを感じてみましょう。
(スナック菓子「ばかうけ」を受け取る患者さん)

【患者さん】
やる前と違う、全然違います。

奥歯も噛めますよ。

はい。

前歯で切って、奥歯にだんだん持っていくんですね。

こっち(左)ばっかりで噛んでいた。
右頬を噛んでしまうんです。

6. 頬を噛んでしまうことを解消するため、再びロウをもって調整

歩く時も、実は左右対称にならないんです。
歯も一緒で、右左の噛みやすいところで噛んでもらえばいい。
一番よくないのは痛いところで噛むこと。
今、どっちでも噛めます?

今こっち(右)で噛むと、頬の肉を噛んじゃうんですね。

頬の肉を噛まないような加工の仕方があるので、やっておきましょう。
入れ歯の出っ張りをつけることで、噛まなくなります。
その加工をやっていきますからね。

もう後加工だけなので、その形に収めていきますね。
じゃあ食べちゃってくださいね。
ココ(右頬)のお肉がちょっと内側に入ってきているの。
みなさんそういう風になることが多いけど、その加工と、裏打ちしたのものを置き換えます。
費用が掛かるので、先生からご説明あると思いますが、6万円かかります。
これで1回リフレッシュすれば、外れないし大丈夫です。
ではこの間、おうちにあるリハビリ入れ歯で過ごしていただいて。
(約1週間でリベースした入れ歯が戻ってくるとのこと)

7. 再び噛み合わせチェック(右頬噛み合わせ/中心チェック)

大丈夫そうです。

9. リベース(再構成)用補正KGK完成

結構大工事ですが、これで食べられるようになります。
お互いに根気のいることですが、三宅先生は逃げない先生です。
楽しく食事が出来るように、末永くお付き合いくださいね。

下記のような「入れ歯問診票」でも、入れ歯の状態をお伺いしています。

取材後記

「思いのたけをバーっとしゃべる患者さんもいれば、自分の感覚を控えめにしゃべる患者さんもいる」
とインタビューで語っていた歯科衛生士の田川さん
実は、最初は控えめにお話ししていた患者さんでしたが、おせんべいを噛んだ後から実はあれもこれもと困っているポイントをお話ししていました。
やっぱり、何でもかんでも先生や技工士さんにさらけ出すのは簡単なことではないという場面を目の当たりにして、信頼関係の大事さを感じました。

希望が叶ったら、ひとつでも現状が改善すれば、「じゃあ相談してみようかしら」という感じで我慢なさっているんだろうなと感じました。

口の中の状況は刻々と変化している、ということを知れば、調整が申し訳ないと思うこともなくなると実感しました。