入れ歯専門技工所「近藤義歯研究所」代表
近藤太 インタビュー
技工所見学のあと(詳しくはコチラ)、入れ歯専門技工所の代表、近藤太(こんどうたい)社長にお話を伺いました。
目次
- 歯科技工所(しかぎこうじょ)とは?
- 歯科技工士(しかぎこうし)とは?
- 「昔、私は八重歯があったの。こんなにキレイになって嬉しい!」
- 入れ歯を作る工程は「150」以上
- 噛み合わせって、どうやって決めるの?
- 健康なうちにちゃんとした入れ歯を作ってほしい
- 三宅先生は、諦めないタイプの先生です
- 近藤義歯研究所は、患者さんを可能な限り直接診ています
- 「神奈川で一番うまい技工士さんが、今日はあなたのために来てくれました。」
- 取材後記
歯科技工所(しかぎこうじょ)とは?
技工所見学、とても楽しかったです!でも、入れ歯をどこで作っているのか、知らない方が多いと思います。
そもそも、歯科技工所って何ですか?
歯医者さんで使う補綴物(ほてつぶつ)・・・例えば詰め物、かぶせ物、入れ歯、を作っているところです。
今までは、入れ歯は歯医者さんから来る「技工指示書」という紙に書いている指示のとおりに作っていました。
それが今、歯科技工所から歯医者さんに提案するという流れに変わってきています。
三宅歯科医院は、弊社の「超」精密入れ歯を一緒に入れ歯を作ってくださる先生です。
製造する側がよいものを製造して、先生の治療をサポートする時代になってきました。
先生と技工所の関係の変化の過渡期、なんですね。
全く変わってきています。
保険診療は、型取り→試適(してき:入れ歯を試着すること)→完成という感じで、来院が3回くらいの工程です。
今は「この工程をプラスしたら、もっと良くなりますよ」という工程がたくさんあるんです。
昭和の時代と令和の時代では、違います。
歯科技工士(しかぎこうし)とは?
なるほど。では、歯科技工士って、何ですか?
歯科技工士は、国家資格です。
なので、歯科技工所は「国家資格保持者の集団」です。
2年間学校に行って、毎年2月に筆記と実技の国家試験を受けます。
ちょっと歴史を語ると、歯科技工学校が設立されたのは昭和30年代です。
そこから50年も60年も経っているのに同じ流れで入れ歯づくりが行われているのは、時代遅れですよね。
昭和の30年代のコンセプトで、今現在モノを作ってないですよね・・・例えば白黒テレビを買いますか?という話です。
やり方、考え方、いずれも変わってきているということですね。
はい。
入れ歯=人間の「人工臓器」を作っているんです。
入れ歯は専門用語で「義歯(ぎし)」といいます、義手、義足、義眼、義歯・・・同じ「義」が付くものです。
義歯(入れ歯)は、機能がしっかり補えます・・・天然の歯か、それ以上。
「昔、私は八重歯があったの。こんなにキレイになって嬉しい!」
義歯(入れ歯)で、自分にもともとあった歯以上のものが入る可能性がある?
はい。
歯並びが悪いと噛み合わせが悪いですが、歯並びがキレイに並んでいれば噛み合わせは一番いい。
入れ歯では、キレイに並んだ理想的な噛み合わせを、実は人工的に提供できるんです。
キレイな歯並びになるので、若い時に歯並びが悪くて噛めなかった方が入れ歯にするとキレイに噛ませることが出来るようになります。
・・・なんかキツネにつままれたような。(笑)
歯並びが悪くてコンプレックスだった方は、「昔、私は八重歯があったの。こんなにキレイになって嬉しい!」と言われたことがあるんです。
逆もあって「私ココに八重歯があったの、だから八重歯を作ってください、昔みたいになりたいから」というオーダーも来ます。
それは受けるんですか?
受けます。
出来るんですけれど、結果的に「これとこれ、どっちがいいですか?」と1回いい入れ歯を入れると「ああ、すごく自然」と言われる。
歯の並べ方の技術力も大切で・・・同じ技工士でも麻雀牌のような歯並びを作っちゃう人もいるんですよ。
天然の歯を模倣した人工の歯でも、「自然に見える歯並び」ってあるんです。
自然な歯並び・・・。
プロが描く絵は、プロの絵ですよね。
入れ歯のプロが並べると、天然に近い歯並びを作れるんです。
僕らが並べる歯は、プロ中のプロですから自然な歯並びにします。
餅は餅屋ですね。
一方、こちらから歯並びのリクエストをしていいという話を聞いて安心しました。
入れ歯の型どりに立ち合った技工士(「超」精密入れ歯は、歯科技工士立ち合いあります。下記インスタグラム参照)は、患者さんのお話をよく聞くんです。
歯の色も見本があるので「いちばん白い歯にしてほしい」と言われますが、そういう白さにするのは不自然になります。
人間の体に合う白さが「1」だとしたら、「0以下」だと異常・・・自然な色を逸脱したこの壁の色みたいな白は、おかしいんです。
ちなみに人工の歯って、何色くらいバリエーションがあるんですか?
白は無限にあるように・・・A1A2などありますが、その間の白も無限に作れます。
根っこの方はA2、真ん中はA1.5、歯の先端にいくとA1になっているんです。
着け心地だけでなく、色も「超」精密、ですね。
実際人間の歯って、そうなっているんですよ。
歯の構造は、大まかに3層構造(下記画像参照)になっています。
エナメル質、象牙質、歯髄と、その構造が薄いところから厚いところにグラデーションが掛かるんです。
同じ白でもこのティッシュ、真っ白だと思っているじゃないですか。
真っ白じゃないんです、よーく見てください。
ほら、影になっているところが黒っぽくなっていますよね。
光の加減によって、変わります
この陰影を使って、歯をキレイに並べるんです。
そんな細かい技を・・・。
これをまっすぐ並べれば、この方が一瞬はキレイです。
僕らはこれをこうやって、ここに陰影が付けて立体感を出しています。
確かに、歯は緩やかなアールが付いているのが自然ですよね。
ちょっとした技工の歴史をお話しすると・・・戦後すぐ位までは歯科医師が入れ歯などの技工物を作っていたけど、昭和30年に技工士法という法律が出来て、技工を外部に依頼するようになりました。
その頃から口腔内に触れない、口腔内を見たことない技工士が生まれ始めたんですね。
直接患者さんに会わないために、150以上ある工程を端折る技工所も出てきました。
入れ歯を作る工程は「150」以上
工程が150以上?!それは「超」精密入れ歯だから、ですか?
いいえ、入れ歯を作る工程は基本的に150以上あるんです。
(保険157/自費225 ※症例によって大きく前後することがあります)
うちには「KGK基準」というのがあります。
体操とかフィギュアスケートと同じ、点数化しています。
「質」が決まれば、あとは「数」と「時間」なんですよ。
「基準」を決めたとたん、クオリティ(質)が、ガンと上がった。
目標が分かる、物差しがある、ということですね。
各工程に「マイスター」がいて、それぞれ基準があります。
そういう人たちが巡り合えたことも(そういう社員がいることも)、僕は運がいい。
入れ歯道をまい進してきた代表の「お墨付き」なんですね。
噛み合わせって、どうやって決めるの?
「下アゴは上アゴにぶら下がっているだけなので、合わない入れ歯を入れていると噛み合わせがズレてくる」と聞きましたが本当ですか?また、合わない入れ歯を使っていると、アゴの左右の高さが違ってくるとのことなのですが、それを患者さんは自覚していますか?
悪かったら認識しています。
右足はハイヒール、左足はスリッパを履いたら分かりますよね。
入れ歯でも、同じことがいえます。
その高さを治す方法があります。
え?噛み合わせを変えられるんですか?
「リハビリ入れ歯」(下記写真参照)です。
リハビリをしなかったら、左右のアゴの高さが違う状態で作ることもあり得えます。
実は、左右のアゴがズレたまま作っているところが9割です。
人間の身体の中で唯一、右と左が同じ動きをするのがアゴです。
手も足も目も左右対になっていますが、別の動きが出来ます。
が、アゴはつながっています。
前の社屋に「シンメトリーは美しい」と壁に貼ってありましたよね。
あれは意味があって、シンメトリー(左右対称)にしてはいけない、というコンセプトなのです。
え?そうなんですか?
先ほど、排列(はいれつ:人口の歯を人口の歯ぐきに並べていく作業)という工程・・・左右対称に歯を1個ずつ並べていたじゃないですか。
置く場所があったとしても人間はズレます、僕の歯も下の歯が違います。
顔に対して曲がっているんです。
曲がっている方が正しいという教えがありますが、まず「シンメトリーを目指せ!」なんです。
絵を描くにしても、写実的な絵が描けるようになってから崩していきなさい、というやつですね。
そういうことです。
絵の基本も分からないのに最初から崩して描かないように、入れ歯の排列も最初からちゃんと並べないのはダメで、最初はキレイに並べる、そこから崩していくんです。
うちでは、陰影が出来ることを利用して歯を並べる技術から・・・先ほどの人工歯の色もそうですが普通はA1、A2、B1と考えますが、感性が枠の中にとらわれないよう、思い込みで仕事をしないよう日々研究しながら仕事をしています。
健康なうちに、ちゃんとした入れ歯を作ってほしい
今までに一番嬉しかった患者さんの思い出は?
毎日います。
90代の人で歩くのも困難な方だった方が、今は医院に来て、待合室に来て、診察台まで・・・自分で歩いて来れるようになりました、噛めるようになったから。
三宅先生が送ってくれた動画があったのですが・・・サンドイッチが食べられない、舌に障害があり嚥下障害(えんげしょうがい:飲み込みに障害がある状態)がある。
入れ歯にサンドイッチが付いてきちゃう、3分経ってもそのまま。
その患者さん、型どりの時は医院まで来られたけど、試適(してき:入れ歯の試着)の時は来られなくなった。
でも、三宅先生は訪問に行って患者さんを診たのです、それくらい熱心な先生なんです。
「何とかしてあげたいから」といって僕に相談してきました。
下アゴが浮くので、浮かないように形を絞ったり、筋肉が弱いなら筋肉に抵抗がないように、とやったら少し良くなった。
「このまま筋肉を受ける形でやってみよう」と僕の中の経験則でやったら、うまくいったんです。
・・・三宅先生はそういう先生なのですね。
入れ歯を作る際に他の部分の機能・・・例えば「認知機能/歩行機能が落ちている方」「寝たきりの方」は、難易度が高いんです。
なので、健康なうちにちゃんとした入れ歯を作ってほしい。
これは絶対に重要です。
自分が今後リスクがあるなと思ったら、足腰が立つ間にちゃんと通って入れ歯を作りましょう。
そうすると、健康寿命が延びる可能性が高いです。
三宅先生は、諦めないタイプの先生です
代表から見て三宅先生はどんな先生ですか?
今言ったように、僕と一緒で諦めないタイプです。
「何とかしてあげたい」、そういう気持ちのある先生です。
僕の感覚の中で「さすがに無理ですよね」ということも、相談してきます。
普通の先生は「無理です」と言うところを、諦めない。
三宅歯科医院で「リベース(今ある入れ歯に肉付けして調整する)」した患者さんは、入れ歯が転覆するんです。
リベースの場面、拝見しました。今ある入れ歯に付け足ししていましたよね。
「リハビリ入れ歯」をやって「ファイナル入れ歯」を入れたけど、噛めるようになったら、更にお口の筋肉がついてくるんです。
そうすると、作った時とお口の筋肉が変わります。
状況が変わったら、修正すればいい。
具体的には、入れ歯が転覆しないように肉付けする、また「左の頬っぺただけ噛んじゃう」と患者さんが言ったら噛まないように治す・・・正直作り直しに近いです。
が、作り直しではなく、リベースという方法があります。
費用は掛かりますが、それでまた快適に使えるんです。
社長がシリコン印象(やわらかい粘土のようなもの)を作った入れ歯にのせて、「アーン、カチカチカチ」とやってましたね。
三宅先生は、実直に技術を学び、自分の医院に反映している先生です。
近藤義歯研究所は、可能な限り患者さんを直接診ています
1995年に開業、ひとことでどんな技工所ですか?
歯科技工所なんですけれど、患者さんを可能な限り直接診ています。
それをなかなか出来ない現実の中、実際に可能にしている技工所です。
それが「立ち会い」です。
患者さんは、実際に入れ歯を作っている人に会いたいんですよ。どこのだれか分からない人が作っているんじゃなくて、社長がこういう人で、技工士さんの立ち合いもあることが分かれば安心します。御社の入れ歯道のページに下記フレーズあって、痺れました。逆に先生に逃げられてきた患者さんも多いのだろうと推察できました。というか、入れ歯道ってすごいですね。(笑)
”全症例でご満足いただく結果を出してきて、今まで一回も外したことない、それを10年以上やっています。
苦労はしますが、何のためにやっているのか?患者のためにやっているので、逃げません。”
いいことの先にいいものがあるんです、行き先が定まらないと道が分からなくなります。
印象(いんしょう:歯型を取ること)の取り方も、安定した結果が出る近藤義歯研究所のやり方をご提案し、実施してくれています。
「神奈川で一番うまい技工士さんが、今日はあなたのために来てくれました。」
三宅先生はどんな先生ですか?
よく技工所に来てくれ、熱心に話してくれる先生です。
「技工士さんと話がしたい」というところが違う。
半年に1回くらい、「いつも入れ歯を作ってくれている技工士さんにお礼を言いたい」と来社されます。
弊社はよく先生が来てくださる技工所ですが、三宅先生はそのなかでも特に来てくださることが多いですね。
基本、歯科技工士が入れ歯を作る際「指示書」と「模型」しか情報はありません。
技工士は、よく技工所に来てくれる三宅歯科の院長の顔は知っている、だから顔の見える院長のために仕事をしたい、と自然と力が入ります。
さらに、立ち合いに行った技工物はかなり熱が入ります。
「あの先生に一度会っている」というのがうちの社員からすると、あの三宅先生の仕事だ、と思う。
ちょっと多めにしておこうかな、と思うわけです。
三宅歯科とどれくらいのお付き合いですか?
10年弱ですかね。(取材は2024/10)
僕を患者さんに紹介してくれる時は、「神奈川で一番うまい技工士さんが、今日はあなたのために来てくれました。」と紹介してくれます。
僕も緊張しますし、うちの社員はよく質問されています。
我々も入れ歯の設計をご提案して、分析してもらって、失敗がないように丁寧に進めます。
保険の入れ歯は、基本的に紙(指示書)だけの情報で作ります。
でも三宅先生は勉強熱心で、疑問があるとすぐに電話が来ます。
工程が150以上ある中、3分の2は技工の工程です。
それを理解しようという真摯な姿勢に心打たれます。
臨床を通して、常に勉強しています。
→院長のインタビューはコチラ
なるほど、ありがとうございます。最後に患者さんへのメッセージお願いします!
三宅先生は、志が「患者さんのために」という方向を向いている、且つ器も広い。
僕らのお付き合いのある先生の中でも、特に勉強熱心で真摯な姿勢の先生です。
僕らも全面バックアップしますので、安心してご相談ください。
インタビュー:2024/9/30
取材後記
取材前に、周りの人に「入れ歯ってどこで作っているか知っている?」と聞くと「工場?」「どこだろう?」「歯医者さん?」という返答でした。
それくらいまだ歯科技工所は認知されていない、さらに歯科技工士はもっと認知されていない状況です。
近藤社長は、困っている患者さんと真摯に向き合い続けた結果、既存のシステムに改良に改良を重ねて超オリジナル「超精密入れ歯」(KGKデンチャー※デンチャーは入れ歯の意)を作ってしまいました。
会社の理念に
- 患者様のために存在し
- 患者様のために技術革新し
- 患者様の痛みのない生活に貢献し
- 真摯な企業活動により社会に調和し信頼を得る
と、本来直接のお客さんである歯科医院ではなく、患者様、というキーワードが出てきます。
入れ歯職人の紆余曲折の歴史は、入れ歯で困っている「患者様のために」紡がれてきたものなのだなと、知れば知るほど感じます。
→近藤義歯研究所ホームページ
そんな技工所とタッグを組んでいる三宅歯科で作る入れ歯は、コミュニケーション含め安心してお願いできると感じました。
三宅歯科医院、近藤義歯研究所、どちらも「ガチ」です。