大公開!入れ歯作りのプロセス
入れ歯が出来るまでのプロセス、全然想像がつかないんです・・・。
たい焼きが出来るような、カパッと出来るイメージ?
歯科技工士さんが一つ一つ、心を込めて作っています。
保険はもちろん、「超精密入れ歯」はさらに手間暇とノウハウを最大限に生かして作ってます。
入れ歯づくりのプロセスの中でも「型取り」は、入れ歯の良しあしを決める生命線であり、さらに歯科技工所では信じられないくらい多くの工程を経て、入れ歯が出来るんです。
(保険で157工程、超精密入れ歯で225工程)※症例により大きく前後する場合があります
その違いを含めて、一緒に見て行きましょう。
「超精密入れ歯作り」と「保険の入れ歯作り」の違い
型取り時(医院内)
超精密入れ歯 | 保険の入れ歯 | |
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型取りの素材 | シリコン印象3種類 ①ドロ~/②さらに柔らかいドロ~/③水のように柔らかい素材 ※歯ぐきの端まで型どり出来る | アルジネート印象(硬いもの) |
型取りの回数 | 3種類の印象を3回に分けて取る | 1回(保険で決まっている) |
型取り時の口の動き | 閉口法(へいこうほう):口を閉じて取る。開けたり閉めたりして筋肉の動きも転写できる →超精密な型取り | 開口法(かいこうほう): 口を開けたまま →頬と外側の歯ぐきの奥まで型が取れない |
トレー | 「超」精密入れ歯専用オーダートレー | 既成トレー |
技工士立ち合い | あり(最大3回) | なし |
噛み合わせを測る道具 | ゴシックアーチトレーサー | ロウ堤 |
噛み合わせの高さ | 適正(口の周りに張りが出て若々しく見える) | 高さが低い(口の周りのしわができやすい) |
アゴの位置 | ゴシックアーチトレーサーで計測 →安定した数値が取れる | ロウを噛んで取る →安定しない |
先生→技工士への情報 | 模型 指示書 問診票 口腔内写真/お顔の写真 2種類のレントゲン 技工士立ち合い ●ドクターと技工士の「協業」 | 模型 指示書 問診票 ●ドクターが型取りしたものを技工所に発注する「別々の作業」 |
技工所での制作工程
超精密入れ歯 | 保険の入れ歯 | |
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工程数 ※症例により大きく前後する場合があります | 225 | 157 |
人工の歯の並べ方 | コンプシステム(近藤義歯研究所の特許) | 技工士の経験により、仕上がりにばらつきが出る |
お顔との写真分析 | あり | なし |
人工歯 | 患者さんに最も合う色/形/素材が用意できる | 種類が限られているため、残っている歯と色・形のバランスがとりづらい |
バネ(部分入れ歯の場合) | 残っている歯に負担を掛けないように設計 | 残っている歯を取りかこみ固定するため、バネが見えたり違和感があったりする |
床(しょう:歯ぐき部分)の素材 | ・薄く違和感が少ない ・表面がツルツルのため汚れが付きづらい ・水を吸わない | ・割れやすい ・かなり厚くなる ・水を吸うため、においや汚れが付きやすい |
リハビリ入れ歯 | あり(リハビリ入れ歯含め同工程で2回、入れ歯作成) | なし |
本番入れ歯セット時(医院内)
超精密入れ歯 | 保険の入れ歯 | |
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本番入れ歯セット時の技工士立ち合い | あり | なし |
フィット感 | 骨を覆うように広い範囲をカバーしてるので、入れ歯がぐらつきにくい | 狭い範囲で力を受けるので、入れ歯がぐらつく |
痛み | ものを噛むときの圧力が、粘膜の広い部分に分散するので、痛みが少ない | ものを噛むときの圧力が、入れ歯を介して一部に集中して、痛みを感じる |
すき間 | 入れ歯と粘膜が吸盤と同じ原理で吸い付くので、空気や食べかすが入りづらい | ほっぺの端まで入れ歯が行ってないので、空気や食べかすが入って、入れ歯が浮く(転覆することもある) |
見た目 | 噛み合わせの高さが本来の位置に近くなり、若々しく見える ※リハビリ入れ歯をした場合 | 嚙み合わせの高さが足りないため、クシャおじさんのようになりがち |
ピンポイント解説:埋没(まいぼつ)って何?!
150を超す膨大な入れ歯の制作工程のうちの、ほんの一部をご紹介します。
その名も「埋没」。
保険の入れ歯でも、この前後に下記の作業があります。(自費はもっと多い)
マウント→複模型作成→設計→サベイング→パターン→スプールイング→メタル形態修正→排列→形成→「埋没」→重合・割り出し→着脱・咬合調整→納品化→発送作業
「埋没」を簡単に言うと、ロウで作った仮の入れ歯をプラスチックに置き換える工程の「準備作業」です。
準備だけでも様々なノウハウを駆使して、お仕事をされている現場を取材してきました!
その1:一没(いちぼつ)
埋没という工程があるそうですが、何を何に埋没させるんですか?
「ろう(蝋)の土台で作った仮入れ歯」を、「石膏」に埋没させます。
今やっている「ノンクラ(ノンクラスプデンチャ―:金属のバネがない入れ歯)」の場合は、専用の型(クラスト)を使います。
そもそも「埋没」って、何のためにやるんですか?
「ロウの土台の仮入れ歯」を患者様の口腔内に入れるためには、「ロウ」じゃなくて「プラスチック」(樹脂:レジン)に置きかえる、その置き換える前の準備段階を「埋没」といいます。
埋没後、ロウがレジン(プラスチック)に置き換わった状態にすることを重合(じゅうごう)といいます。
レジン(プラスチック)に置き換えた後、石膏に埋まっている(埋没されている状態)入れ歯を割り出します。
専門用語が山盛り・・・。(汗)ロウで作った歯ぐき部分を溶かして、プラスチックにするんですね。でも、プラスチックを流し入れるって、どうするんでしょうか??
熱でロウを溶かし出して、レジン(プラスチック)をゆっくり流し入れます。
むらなく流し入れることがまず大変ですし、保険と自費では素材が違うので、掛かる時間も大きく手間も変わってきます。
(作業を見て)これは何をやってるのですか?
ワセリンを塗って、石膏を流した後も割り出しやすくしています。
重合時に使う石膏は、普通の石膏と違って、圧に耐えられる石膏です。
石膏は水に溶かして混ぜます。
埋没には「一没二没三没」とあります。
いちぼつ/にぼつ/さんぼつ?!もしかして三層のゼリ―のようになるんですか?
(笑)そうですね。埋没にも3段階あるので「一没/二没/三没」です。
石膏が固まるまで5分掛かるので、他の入れ歯も見てみましょう。
これは埋没しプラスチックに置き換わった義歯(ぎし:入れ歯)で、埋めた石膏から取り出していきます。
傷つけないように義歯を割り出すのは、本当に難しいです。
この入れ歯は、保険の入れ歯ですか?
保険の入れ歯です。
さらに着いた石膏をキレイに落とし、研磨→着脱・咬合調整→納品化という工程を経ます。
保険の入れ歯でもこんなに手間を掛けているんですね・・・。
はい、そうなんです。
5分経ち、一没目が固まりました。
「人工歯」と「レンジ」の間の溝に石膏が入ると、重合するときに人工歯が床の中に巻き込まれて再現ができなくなります。
これがレジンの通り道(下記画像>ひも状の部分)です、埋没した状態でこの穴を通してレジンに置き換えます。
(よく見る)レジンの「入口」とロウの「出口」があるんですね。
はい。
全ての工程を、二重チェックをして進めます。
まず先輩に教えてもらって、チェックしてもらって、チェックが通らなかったらNG、通ったらOKというステップを踏むので、確実に技術がステップアップします。
剥離剤を塗って「通り道」を作ります。
ロウが流れ溶けたあと、プラスチックが流れやすくするためのノウハウがあるんですか?
上部からレジンが入るので、レジンがまっすぐ入るような立て方をしています。
レジンと入れ替えるときに、石膏を巻き込まないように滑らかに・・・。
おお!すごい!
どれだけ心砕いているんだ?!って感じです・・・こんな手の込んだ工程を見たら入れ歯が高いと言えないし、思えません。プラモデル好きでした?
ミニ四駆、ムッチャ好きでした。(笑)
その2:二没(にぼつ)
これから「二没」です。
人工歯にも圧が掛かっちゃうので、二没で石膏をもう1回被せて人工歯を押さえてあげるんですけれど、抑える時につかむところがないとそのまま落ちちゃうので、落ちないような仕組みにしています。
(なめらかでちょっとおいしそう、笑)なんて細かい作業、職人ですね。
機械でブルブルさせて、空気を抜いて均等にさせます。
二没からは「石膏の形」がそのまま「入れ歯の形」になるので、表面に気泡を入れたくないのです。
石膏に気泡があると後の工程の人達の手間が増えちゃうので、なるべく気泡を入れないように(石膏の)撹拌機を使ってより精密にしています。
石膏を入れた器も、すぐ洗わないと固まっちゃうんですね(洗い物大変・・汗)
洗剤と水を混ぜたのを塗ると、一没と二没がはがれやすくなり、割り出し(埋没させている石膏を割る作業)の作業が楽になります。
前工程/後工程の人の迷惑かからないように、仕事をしています。
さながら「埋没・重合マイスタ―」ですね!
且つ、前後の工程の人への思いやりがすごい!
こんな緻密な工程を経て、入れ歯は作られるんですね・・・。
その3:三没(さんぼつ)
次は「三没」です。
先に専用の型(クラスト)を締めてから・・・。(ドリルで締めています)
三没用の石膏を練ります。
三没用の石膏を漏斗(じょうご)で流し入れていきます。
出来上がり!(👏)
埋没は動画だと一瞬しかありませんが、これだけ細かい工程があるんですね。
これだけ細かい作業をするのは、自費の入れ歯だけですか?
保険の入れ歯でも、一没/二没/三没あります。
おお、そうなんですね!
1日にどれくらいやるんですか?
多い日だと60、平均で45くらいです。
おお、すごい数ですね!
はい。
この機械で仮の入れ歯のロウを溶かす「脱蝋(だつろう)」をし、重合します。
保険の入れ歯の脱蝋・重合機はコチラです。
超精密入れ歯はコチラの機械でやります。
本当にゆっくりやるので、ほぼ水を吸わないプラスチックに置き換えられます。
なので臭いも汚れも付きづらいんですね。
おお、すごい数ですね!
ちなみに、金属床の金属部分は、鋳造(ちゅうぞう)するんですよ。
下記写真が「鋳造室」です!
いろんな工程があることを少しでも知っていただけると、幸いです。
取材後記
正直、患者さん向けにここまでご紹介するのは、あまりにもマニアックすぎやしないかと思いました。
が、説明してくれた須藤さんが、とにかく丁寧に情熱を持って説明してくれたことを患者さんに伝えなければという使命感で、この記事を書きました!
出来上がった入れ歯「だけ」を見れば、値段の事でいろいろ思うこともありますが、その値段の背景に一体どれだけの手間と情熱があるのかを知ると、それは決して高くない、と思いました。
企業理念に「患者様のために」(下記参照)という文言がありますが、その言葉に偽りはありません。
企業理念
我々は
患者様のために存在し
患者様のために技術革新し
患者様の痛みのない生活に貢献し
真摯な企業活動により社会に調和し信頼を得る