三宅歯科医院院長 三宅公太郎 インタビュー
目次
- 最後に患者さんを救える治療って、入れ歯しかない
- 保険の入れ歯と自費の入れ歯、どう違うの?
- 三宅歯科医院について
- 「超」精密義歯(KGKデンチャー)について
- 「超」精密入れ歯を作っている、近藤義歯研究所について
- 予防歯科を完遂するための「訪問歯科」
- 歯科医師会の活動は楽しいんです
- 患者さんにメッセージ
- 取材後記
入れ歯について
入れ歯治療が20年以上、経験が豊富とのことなのですが。
高齢化社会なのでこれから先、入れ歯が増えることは間違いありません。
インプラントをやらない限りは、欠損補綴(けっそんほてつ:ない歯を補う治療)で入れ歯、じゃないですか。
入れ歯を習熟することは必須だと思っています。
入れ歯の患者さんは増えるので、絶対大事です。
訪問診療先でも入れ歯を作る機会が多くて、入れ歯は大事な治療だと痛感しています。
最後に患者さんを救える治療って、入れ歯しかないんです。
インプラントが出来る人は、そんなに多くないので。
入れ歯への思い入れが深くなったエピソードはありますか?
そういう人に、たくさん出会ってきています。
訪問診療だと生活環境も見えるじゃないですか、こういう生活している、こういう人と暮らしている・・・。
勤務医時代に訪問していた時、目の見えないおばあちゃんがいて・・・妹さんが一緒に住んでいて、江ノ電が走っている崖の上の中腹に家があったんです。
そこの家に行く途中、海が見えるというような場所です。
最初、入れ歯の治療がすごく大変だったんですけれど、治療がひと段落したころ、私は開業することになりその旨を伝え「また何かあったら連絡くださいね」とお話ししたら、1~2年した頃「入院先へ訪問診療に来てほしい」と連絡をいただきました。
訪問診療とは別に一度、入院先にお見舞いに行ったりして。
入院先でお話ししてついでに入れ歯を診たりして。
訪問診療は16キロ圏内という縛りがあるのですが、当院からギリギリ行ける場所だったんです。
・・・先生に診てもらいたい、先生がいいんですね。本当に最後まで一生診てくれる、終(つい)の入れ歯ですね。
小さな入れ歯でしたけどね。
保険の入れ歯と自費の入れ歯、どう違うの?
三宅歯科医院の入れ歯は、保険の入れ歯でもすごく合うとのことなのですが、どうして合うのでしょうか?
院内の入れ歯をお願いしている技工所さんは、複模型法(ふくもけいほう)というのをやっているんです。
ふくもけいほう?
入れ歯を作る過程で、医院で取った「歯型の石膏」が壊れちゃうので、技工所で入れ歯が出来た時に「答え合わせ」が出来ない。
なので、入れ歯を作る過程の最初に「模型のコピーを取る」手間かけて、答え合わせが出来るようにしてくれる技工所さんなんです。(通常、自費の入れ歯で用いられる方法です)
歯科医師向けですが、説明の動画も作っています。
なるほど。だったら保険の入れ歯でもいい気がしてきました。
そもそもの技術力が高い技工所だから、保険の入れ歯もいいんですね。
ただ、難しいケースの「保険の入れ歯」の場合、例えばあらゆる手が使えない状態で強敵と戦わなきゃいけないという状態・・・木刀のみで戦え、という感じですね。
「自費の入れ歯」は援軍もいるし、いろんな武器も使えるし、フル装備で挑める訳です。
でも、先生は難しい症例も保険でやってくれると聞きましたが。
「保険の入れ歯」で「いや、これはミサイルないと勝てないな」という難しい症例でも、竹槍(たけやり)で戦います。
最終的なゴールは、「保険だから噛めなくてもいいよ」ではないんです。
患者さんは保険でも食べたいんです。
保険の入れ歯で「食べられない/痛い」も、最後まで調整します。
これが「超」精密入れ歯(自費)ならもうちょっと早く解決しているな、と思うことはあります。
でも、自分の勉強になるんです・・・竹槍で戦っていく中で自分のスキルが鍛えられる。
竹槍で恐竜を倒す方法を、自分で見つける感じです。(笑)
(笑)面白い表現ですね。
先生、責任感の塊みたいですね。
メインで御院の入れ歯を作っている近藤義歯研究所の代表が、インタビューで「三宅先生は諦めない先生だ」と言っていました。
無理です、って言うのが嫌なんです。(笑)
抜歯などの口腔外科処置やインプラント、歯科矯正はより専門のところへ紹介することが出来ますが、入れ歯は紹介するところがあまりなくて・・・。
大学病院の補綴科(ほてつか:補綴は歯に着ける人工のものすべて)に行っても戻ってきたり、「そこ、かつて行きました」と言われることもある、うちで診るしかない、そうなるとスキルを上げるしかない。
かっこいいですね、先生。
昔、腕がなかった頃は助けられなかった患者さんもいっぱいいます。
こっちのスキルを上げない限り、こっちも楽にはならないです。
一生勉強なんですね。
本サイトに「経験豊富」と書いてありましたが、今の話を聞いて十分経験豊富だと分かりました。
患者さんが来た以上は、全力を出します。
でももっとすごい先生いっぱいいるので、まだまだだなと・・・先日もDVDを診て勉強し、自分のやり方を更にカスタマイズしています。
「去年の自分」と「今の自分」とは、やっぱり違いますよね。
いいところは取り入れて、改善点は違う方法にしていくんですね。
日々アップデーㇳ、ですね!
「この入れ歯、他のところで作ったけど合わないんだよね」と他の医院で作った入れ歯を持ってくる人は、結構います。
作ったばっかりだから保険で作り直せないので、その入れ歯で何とかするしかないんです。
(6か月開かないと、次の保険の入れ歯は作れません)
それ、すごい勉強になるんです・・・「こうしてみたら良くなるかな」と考えます。
同じように、入れ歯の修理も勉強になります、「リベース」も勉強になります。
守備範囲が広いですね。
・・・ということで、他院の入れ歯調整/修理は、全然OKということですね。
そして先日、入れ歯相談会取材時に、「リベース」(口の筋肉の変化に合わせた入れ歯の調整)、目の当たりにしました。
他院の入れ歯調整/修理の初診時は、どうしても時間は限られますが「変わった」と思える状態にはその日のうちにしたいんです。
他院の入れ歯の患者さんはだいたい急患や新患で来るので、口の中を診て、時計を見て、求めていることがある(主訴)、何で今日歯科医院に来ているのか・・・例えば、明日孫の結婚式があってどうしても食べたいとか、そこはクリアしてあげないとダメなんですけれど、その時間内に目的を最短で達成する方法を2~3分で考えて実行する、という感じですね。
今までやってきた引き出しがいっぱいあるから出来ることですね・・・竹槍どうやって使おうかな、みたいな。
竹槍にもいろいろな種類があるので。(笑)
竹槍の種類が豊富なら、ミサイルを持てば余裕かもしれません。
基礎的なスキルの土台は、百戦錬磨の治療をもとに造られたんですね。
毎日苦労しながらやっています。
毎日新しい症例にぶち当たって「どうしようかなあ」とやっています。
三宅歯科医院について
以前医院があった場所から、今の場所に引っ越されているとのことですが。
10年くらいに前の場所で開業しましたが、目立つ場所に出たかったんですね。
当時、あまり広告に費用を掛けられなかったんです。
最終的に出来ることを考えたら、目の前の患者さんに満足してもらって、その患者さんが別の患者さんを連れてくることのが一番なので、そこに集中しました。
そこでも、諦めないですね。
忙しくなってから、当時から来ている患者さんに寂しい思いをさせてしまっているので、申し訳ないなと思っています。
実は昔は、保険だけでいいんじゃないかと思っていました。
クオリティの高いものを経験すると、その価値が分かります。
自費にはそれなりの価値があるんだということを自分の中で腹落ちさせて・・・技工所に行って作っている歯科技工士さんの本気さを見れば、なおさら実感出来ます。
「超」精密入れ歯(KGKデンチャー)について
自費の入れ歯にするか、保険の入れ歯にするか迷っている患者さん多いと思います。
最初自費にするつもりで来てもやっぱり保険になる、というパターンでも、先生的にはいいよ、って思っています?
いいよ、って思っています。
僕自身のタイプとして、最初は患者さんが来て、主訴(しゅそ:一番困っていること)を解決して、メンテナンスでずっと診させていただいて、信頼関係が出来たところで患者さんから「自費でやってください」というパターンが一番いいと思っています。
入れ歯相談会にきて自費でやってくださる方もいらっしゃいますが、踏ん切りがつかない方もいると思うんですね。
その場合は、保険で入れ歯を入れさせていただいり、歯周病のメンテナンスをしていく中で「やっぱりやりたいな」と思った時期が来たらやっていただくというのでいいんじゃないかな、と思っています。
1回保険で入れ歯を作ってその後自費の入れ歯、というパターンでもいいんですか?
というか、保険の入れ歯は6か月間を開けたのち、新しい入れ歯が作れるんですよね・・・。
(気が付く)あ、自費は期間は関係ないですね。
はい、自費の入れ歯は保険の入れ歯を作ったすぐ後でも作れます。
そういう患者さんもいますし、保険の入れ歯に満足されてそのままの方もいます、それはそれでいいと思います。
先生はどういう風に「超精密入れ歯」の説明をします?
「全てが違う」と言います。
その人の興味を持っている部分、例えば「何で困っていますか?」と聞きます。
結構食べられているけど、これが食べられない・・・例えば、葉物の野菜が食べられない、それには「保険の入れ歯は噛み合わせが「5点接触」ですけど、自費の入れ歯だと「面で接触する噛み合わせ」が作れるので、そこは全く違いますよ」と説明します。
接触の違い・・・「主訴」を聞いて、「説明の仕方」を変える訳ですね。
その人の主訴が解決が難しければ、おススメ出来ないわけじゃないですか。
「これは、確実に超精密入れ歯にしたら改善できる」と思ったら、おススメします。
「これは、保険でも十分解決できる問題だ」と思ったら、そういう話もします。
むやみやたらに自費しか売りませんよ、ということではないんですね。
自費の入れ歯を勧められたら「自費にします」と言わなきゃいけないんじゃないか、とドキドキしながら来る人が多いと思います。
先日取材させて頂いた際に「リベース」という、今ある入れ歯に肉付けをして調整するというやり方を目の当たりにしました。
一方、患者さんは「合わないことを、先生に悪くて言えない」と思っていたそうですが、その後どうなりました?
リベースした入れ歯をセットして、「すごくいい」と言っていただきました。
人の身体なので、変化はずっとし続けます。
入れ歯を入れた時がピッタリだったら、「あの時いいって言ったのに、やっぱりダメって言うのは・・」と気が引けます。
「3か月前はOKだったけど、今は痛い」こともありうるという現場を目の当たりしました。人の身体(口腔内)が変わるから、遠慮しないで言っていいということなんですね。
そうですね。
食べられるところまで付き合ってくれるんですか?
力及ばずというところはあるかもしれませんが、全力は出し切ります。
全力のレベルを上げていく事には、余念がないです。
「超」精密入れ歯を作っている、近藤義歯研究所について
入れ歯を作る歯科技工所はどこでも一緒、という訳じゃないんですか?
作り手が変わると、物が変わってくる技工所さんもあります。
ある日突然「あれ?違うな」というのが上がってくる、聞いてみると作り手さんが変わっている。
作り手さんが一人で全部やっている?
小さい技工所だとあります。
超精密入れ歯を作っている近藤義歯研究所は、制作工程ごとにスペシャリスト、マイスターがいるんです。
入れ歯制作は基本的に「150以上の工程」があります。
「埋没(まいぼつ)」という、仮で作った入れ歯の「ろう」を「プラスチック」に置き換える工程があるのですが、見学に行ったら近藤さんでは3回に分けてやっていました。
詳しくはコチラ
すごい工程数ですね。
近藤義歯研究所のホームページを見たら、先生のインタビューが載っていました。
はい、歯科医師向けの内容なのでちょっと難しいですが、どんな技工所さんか?が分かると思います。
→インタビューはこちら
当院で開催される「入れ歯無料相談会」で入れ歯の説明や相談に乗ってくれるのも、近藤さんのスタッフさんです。
予防歯科を完遂するための「訪問歯科」
先生の中で「訪問歯科」の立ち位置は?
訪問歯科は、僕も行きます。
高齢化社会になったら、歯医者に通えない人がいるのは確実です。
そこに対してしっかりと診て差し上げたい、という気持ちもあります。
また、予防型の歯科医院を作ろうとなった時に「この治療をやって、はい、おしまい」じゃなくて、治療した後も長持ちするように、そこから先の何十年もずっと診ることも含まれます。
その患者さんが通えなくなりました、じゃ通えなくなったらうち終わりだから、とするのが嫌だったんです。
じゃあこちらから行きますよ、と言えなきゃ「本当の予防型の歯科医院」ではないですよね。
実際に行って治療させていただいて、最期のお看取りまで出来るという体制を取っておきたい。
「予防型歯科医院」である以上は、そうだと思います。
インプラントもやっていますが、インプラントも最後まで診ないといけないと思っています。
予防型歯科医院の延長に「訪問」はあるんです。
「予防型歯科医院」と謳っている以上、看取りまでという覚悟なのですね。
来なくていいよと言われれば、そこまででおしまいですけれど、患者さんが「診てほしい」と言われる以上は診られる体制を取っておきたいんです。
「歯科医師会の活動」は、楽しいんです
神奈川県歯科医師会、横浜市歯科医師会、磯子区歯科医師会での活動はどんなことを?
歯科医師会、磯子区でも会計と保険審査会もやっています。
自分さえよければいい、という感じになりたくないんです。
自分の歯科医院だけやってて歯科医師会に入らなければ、1歳半検診も3歳児検診もやらなくていいし、学校の健診もやらなくていい。
自分の医院の利益だけ考えたら、歯科医師会は時間も取られるし、やらなきゃいけないことが増えるので、考えちゃうかもしれません。
僕は、歯科医師会をやる時間を取るために、利益が出るような歯科医院にしなきゃならないし、時間を作って外に出て社会貢献を目いっぱいするというタイプかなと思います。
だから、歯科医師会の時間は楽しいんですよね。
楽しいんですね?歯科医師会の時間。
確かに、保健所で1歳半検診してもらえなくなったら、一母親としては困ります。(汗)
それをやっているのは歯科医師会だ、ということを初めて知りました。
はい、そうなんです。
ぜひお見知りおきを。
患者さんにメッセージ
入れ歯でお悩みの患者さんに、一言お願いします!
信頼してくれたからには、全力を尽くして臨みたいと思います。
取材後記
このインタビューの数日前に、入れ歯専門技工所の近藤義歯研究所にも取材に伺いました。
その際、技工士さんが「三宅歯科の入れ歯だと思うと、あの先生のところなんだな、と思う」と言っていました。
それくらい、三宅先生は近藤義歯研究所の技工士さんにとって近い存在です。
立ち合いに来る技工士さんだけでなく、実際に各工程で手を動かす技工士さん(入れ歯の制作工程は、保険でも150以上に及びます)にも慕われていることがよく分かりました。
技工所に行かなくても入れ歯は出来るのに、わざわざ技工所に足を運びコミュニケーションが取れている。
ただの入れ歯という「モノ」じゃなくて「心」が入っていると感じました。
「三宅先生が気を掛けている技工所で、三宅先生の事を知っている技工士さんが作ってくれてるんだ」と思うだけであったかい入れ歯、だなと思いました。
個人的な感想ですが、技工所で実際に手を動かしている人を見たら超精密入れ歯は決して高い買い物ではないと実感しました。
あれだけ情熱と技術を傾けて作ってくれているんですから。